本当にあったパチプロのはなし

ちょっと変わった経験談や、ギャンブルとの向き合い方について書いています。

ちんこがチョコチップのパンみたいになったよ 3(完)

前回からの続きだよ

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手を横にだらんと伸ばし、怠慢な速度で歩く様は巨人を思わせる。当時の僕の身長は今より四十センチは低かったはずで(小学三年生男子の平均身長は132センチらしい)、彼は大の大人だったから、巨人というのもあながち誤った表現ではないだろう。今から四半世紀ほど前、小学生時分の僕は、小学校からの帰り道にて、虚な目をし、聞き取れないほどの小声で何かをぶつぶつと呟く巨人とすれ違ったわけである。

 

見た目はただのルンペンだった。黄色いチェックの半袖シャツに、ベージュのズボン。どちらも黒く汚れている。ルンペンなのだから衣服の汚れは全く問題ない。学生の正装がブレザーや詰襟であるように、ルンペンの正装は汚れていて然りである。唯一そのルンペンが逸脱していたところは、その薄汚ないベージュのズボンのファスナーからちんこが覗いていたことだった。

 

「やべえぞあいつ。ちんこ丸出しじゃねえか。これが露出狂ってやつか」

 

と、小学生時分の僕は思ったわけだが、考えてみれば、彼のことを露出狂だと断定するのは子供の未熟な考えだった言わざるを得ない。僕とすれ違う時も、彼は特に変わったアクションを起こすということはなかったし、もしかしたらどこかで立ち小便をしたばかりで、ちんこをしまい忘れていただけかもしれない。ただ単に、法律や常識に囚われない偉大な人物だったのかもしれない。少なくとも彼は自由だったのだろう。そのやり方は褒められたものではないかもしれないが、自由は誰にも止められない。

 

今の僕には家はあるけれど、職はないし、家族もいない。守るものなど何もない。咎めるものも何もない。巨人も僕も変わりはしない。

 

あの巨人の声なのか、それとも自分の声なのか。耳栓をしているはずなのに、どこからか声が聞こえる。

 

「俺達はみんな生まれた時から自由だ。それを拒むモノがどれだけ強くても関係ない」

 

パチンコを打ちながらちんこを丸出しにする。

 

それは禁忌に思えるけれど、そこを超えなければ自由はない。ジーンズの股に連なるボタンフライは、立ちはだかる大きな壁ではなく、自由への翼。

 

僕は自由だ。パチンコ台を隔てるアクリルボードはあるけれど、そこに大きく高い壁はない。周りに人はいるけれど、それがどれだけ強くても、僕には関係がない。心臓の音が聞こえる。呼吸が速くなる。手が微かに震える。

 

「やるんだな…今…!ここで!」

 

…などと、そんなことを考えていると、怪獣王ゴジラ77verの時短はあっさりと抜けたので、僕は上皿の玉を落とし、出玉をパーソナルシステムに流し、会員カードに貯玉して、少し早いが家に帰ることにした。ちなみにゴジラは全然回らなかった。

 

家に帰るや否や、履いていたズボンとパンツを脱ぎ去り、ぴりぴりと痛むちんこを丁寧に観察した。座椅子に座り、身体を折り曲げ、よく分からない部分はスマホカメラのズーム機能を活用し、判明したのは、僕のちんこはチョコチップのパンになってしまったということである。僕は人間だから、流石に違いは分かるが、カラスであれば、見分けがつかず、思わずぱくついてしまうであろう。それくらい、どこから見てもチョコチップのパンになっていた。

 

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チョコチップにあたる部位は当然イボの残骸である。それは液体窒素によって瘡蓋となり、真っ黒になっていた。本来はそれほどの大きさではなかったのだが、瘡蓋はイボの周囲にも波及し、一ミリほどの、まさにチョコチップ大になっていた。小麦色をしたすべすべのちんこに、そんなチョコチップがちょこんと三つ、等間隔に乗っているのだから、それはチョコチップのパンなのである。

 

チョコチップを触ると、ひりっとした痛みが走る。それは火傷の跡なのだから当然だ。だが、パンツさえ履いていなければ、すなわち、何かしらの接触がなければ、痛むということはない。トランクスのような開放的な下着を履けば、ある程度は気にならないのかもしれないが、残念ながら、僕は普段からボクサータイプのピタッとしたパンツを愛用している。トランクスは一枚も持っていない。であるならば、ノーパンで過ごすのが正解なのだろうが、僕は露出狂ではないのだから、四六時中ノーパンで過ごすというわけにはいかない。どうしたものかと頭を悩ます僕の目に飛び込んできたのは、オロナインの黄色いチューブであった。

 

皮膚疾患 外傷治療に オロナイン

 

その主な成分はクロルヘキシジングルコン酸塩液。効果効能はにきび、吹出物、はたけ、やけど、ひび、しもやけ、あかぎれ、きず、水虫、たむし、いんきん、しらくも。なんでもござれの万能軟膏。チョコチップのパンをちんこに戻すことが出来るのかは分からないが、火傷の跡にはある程度の効果はあるはずだ。

 

チューブから豆粒大を絞り出し、それをチョコチップに丁寧に塗布すると、一瞬の痛みを感じた後に、じわじわとチョコチップに浸透していった。少し間を置き、意を決してパンツを履いたところ、衣擦れの痛みはかなり治ったのであった。

 

それからしばらくの時が経った。時を経るにつれ、オロナインの効能もあり、その痛みこそ改善されたものの、ちんこに戻る気配は一向に無かったチョコチップのパンに、変化が訪れたのは、泌尿器科を訪れてから二日ほど経った晩のことである。

 

今宵のチョコチップのパン、もといちんこの様子は如何程かと、もはや日課になりつつあったちんこチェックに勤しんでいると、三点あるチョコチップのなかでもとりわけ大きい一つが、ぐらぐらしていることに気づいたのである。それは、生え変わる間際の乳歯のような、散る直前の桜の花のような儚さであった。意を決して、僕がそのチョコチップに手をかけると、特に痛みもなく、思ったよりあっさりと剥がれ落ちる。仰天し、恐る恐るその跡を確認してみると、あっさりとイボは消え去っていたのであった。残された二つのチョコチップも、その翌日か翌々日には剥がれ落ち、チョコチップのパンは、いつの間にかちんこに戻っていたのだ。

 

万事元通り、というわけではない。かつてイボがあり、チョコチップのあった部分は、まるでアルビノかのように、透き通るような白味がかった桃色になっていた。小麦色をしたちんこ本体の色と対比すると、そのコントラストは明らかであり、フロッグスタンの迷彩のようなツートンカラーになっていた。一時はフローリングの傷の隠すクレヨンのように、色を塗らねばならないのかと、そう思ったわけであるが、ただそれも、日を追うごとに、使い込む毎に徐々に色が馴染んでいき、二ヶ月経った今では、三十代日本人男性の見本のような、美しく見事なちんこに戻ったのだった。

 

 

 

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