本当にあったパチプロのはなし

ちょっと変わった経験談や、ギャンブルとの向き合い方について書いています。

ちんこがチョコチップのパンみたいになったよ

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二ヶ月ほど前の七夕の頃、深夜、手淫に明け暮れていると、ふと、ちんこにイボのようなできものができていることに気がついた。正確にいうと、気がついたというよりも、気になった。向かって左サイドに二つ、右サイドに一つ。どれが彦星でどれが織姫なのかは分からないが、七夕を祝福するかのように、僕のちんこには夏の大三角が描かれていた。

 

この話の根は意外と深く、事の発端は五年ほど前に遡る。

 

その頃、僕は脚の綺麗な会社員の女性と、局部から結構いかつめの匂いのするおっぱいパブに勤める女性、合計二人の女性と日常的に性的な関係にあった。たぶんそのうちのどちらかから拝借したのだと思う。普通に考えれば後者、すなわち、局部から結構いかつめの匂いのするおっパブ嬢から拝借したと考えるのが妥当な気がするが、それは分からない。推定無罪の原則というやつだ。あるいは、昔から持っていたウイルスが、そのタイミングでたまたま発現しただけかもしれない。僕は帯状疱疹に罹ったことがあるし、口唇ヘルペスにも何度か罹ったことがある。それが性器に発現したのかもしれない。

 

まあとりあえず、原因はよく分からないが、五年ほど前にちんこに小さなイボができた。この時はまだ、イボの数は一つである。

 

これは僕の落ち度だし、有り体に言って少しヤバい行動だと言わざるを得ないが、僕はそれから五年間、そのイボを放置した。「このイボを立派なものに育て上げるのだ」と断固たる決意を持っていたわけではないけれど、ただ単純に医者にかかるのが面倒だったし、それほど目立つものではなく、「あぁなんかできてんな。放っときゃ治るだろ」くらいの感覚だったのだ。少し弁明をさせてもらうと、見た目上、本当に大したものではなかった。にきびとも言えないほどの小さな点だ。五年の間、何人かの女性にちんこを見せる機会があったわけだが、そのイボについて突っ込んだ人間は一人だけである。その女性にしても、僕のちんこのイボを指でぷにぷにと触りながら、「ナニコレ、ナニコレ」と片言の日本語で呟くばかりで、深く追及されることはなかった(彼女は外国人だった)。

 

ではなぜこの度、急にそのイボが気になったのかというと、二ヶ月前の七夕の日に手淫を試みようとした、その日その時の勃起が、過去に類を見ないほど素晴らしいものだったからである。そこには別に何かしらの理由や原因があったわけではない。珠玉のVR作品を見つけたというわけでもなく、カマグラなりバイアグラなり、薬物を摂取したというわけでもない。おそらくは食事や体調や精神状態が、そのタイミングでうまく合致したということになるのだろう(その状態を再現すべく、それから幾度となく様々な試みを行ったものの、今のところ成功はしていない)。

 

それは縄文杉のような逞しさと、さるすべりのような平坦で緻密な美しさと、アカシアのような堅牢さを兼ね備えていた。一目見るだけで誰しもが恋に落ちてしまうような、ルネサンスの彫刻のような、素晴らしい勃起だった。僕は自分のちんこであるにも関わらず、思わず見惚れてしまった。目をちんこに奪われた。完璧に見えた。「ここ数年で最高の出来」とか「近年の当たり年である2009年に匹敵する出来栄え」と言って差し支えない。その大きさこそ極めて矮小なものの、それ以外の要素、色艶形、どれをとっても一級品だった。美術品として後世に残すべく、写真を撮ってルーヴルなりMOMAなりに寄贈するべきだと考え、ちんこを手に取りつぶさに点検したところ、完璧かと思われたちんこに唯一の欠点が見つかった。

 

イボだ。

 

かつて一つの小さな点だったはずのイボは、そのサイズこそ変わらなかったものの、いつの間にか三つになっていた。左サイドに二つ、右サイドに一つ、差し詰め夏の大三角のように、僕のちんこに星座を描いていたのだ。

「このイボさえなければ完璧なちんこなのに」

そう思うや否や、僕はいてもたってもいられなくなった。ちんこに星座があるというのはロマンチックな話だが、僕のちんこは夜空でもキャンバスでもないのだ。

 

翌朝、泌尿器科を専門とする小さな診療所に僕はいた。

 

ちんこ、ちんぽ、ちんぽこ、ちんちん。考えてみれば、ちんこには数多の呼び名があるものだ。接頭語として「お」をつけたり(おちんちん、おちんぽ)、一部の地方でのみ通用する方言的な呼び名だったり、古文漢文の類だったり、そのバリエーションは凄まじく、ともすれば、日本語の名詞の中でも一番多いのではないか。そんな中で、泌尿器科の問診票を書くにあたり、どの単語を使うのがいちばん適切なのかを僕は考えていた。僕が平時よく使うのは「ちんこ」もしくは「ちんちん」なのだが、泌尿器科で用いるには少しフランク過ぎるのではないかと思ったのだ。悩んだ末に、僕が選んだ単語は「ペニス」であった。本当は陰茎と書こうとしたのだが、漢字にいまいち自信が無かったので、第二候補のペニスにしたのだ。とどのつまり、問診票の「今日はどのような症状で来院されましたか」という欄に、僕は「ペニスにイボができました」と書いたのだった。

 

泌尿器科を受診するにあたり、一番の懸念は「ちんこたったらどうしよう」というものであった。僕は特にそういう性癖があるわけではないが、立場上、医療モノのAV作品はいくらか見たことがある。その中では、扇情的なタイトなスカートスーツの上に白衣を羽織り、黒縁の眼鏡を掛けたセクシーな女医が登場するのが常だ。そんなものが目に飛び込んでくれば、泌尿器科とか関係なしに、普通にちんこたつ。それを危惧したのだ。結論から言うと、それは完全に杞憂であった。僕を診てくれた先生は、ステレオタイプのハゲたジジイだったからだ。ジジイは僕が診療室に入るや否や、「じゃあ脱いで下さいねえ」と言った。僕は「どこまで脱いだらいいですか?」とジジイに尋ねた。ジジイは「そら全部脱いでくださいよ。そうしないと診られませんからね。ヘヘッ」と言った。

 

違うのだ。齟齬がある。この時点で、僕は相当ムカついた。ジジイに向かって怒鳴り散らしてやりたい気持ちになった。僕はパンツを脱ぐことを前提として、『ズボンを全て脱ぎ去った方が良いのか、それとも股下に下げる程度でいいのか』というニュアンスで聞いたのだ。それに対して、ジジイは『パンツを脱ぐのは当然だろ?』というニュアンスで答えたのだ。まあそれは良い。だが、僕がズボンを全て脱ごうとすると、ちょっと食い気味に「いや全部脱がなくていいから。膝まででいいから。ヘヘッ」と言ったのは許せなかった。この時点で、このファーストインプレッションで、ジジイと僕の間には埋められない大きな溝ができてしまった。だがそこは、僕も大人である。アルタイルよりも大きな溝を感じつつも、ぐっと溜飲とズボンとパンツを膝まで下ろし、黙って診療台に仰向けになった。

 

さて、触診が始まったわけであるが、このジジイ、手つきがクソ荒い。人のちんこをまるで格闘ゲームのレバーかのように、がちゃがちゃ、がしがしと弄るのだ。陰毛を巻き込むことなどお構いなしに、激しく弄りまわしている。それは自分も男であるにも関わらず、人の痛みを省みず、自身の利のみを追求する、まさに鬼畜の所業であった。この時、僕の心を支配したのは怒り、では無かった。正確に言葉に表すのは難しいのだが、切なさと恐怖が入り混じったような、どろどろとした黒い感情が心に渦巻いていたのだ。ちんこを差し出す側と弄る側。完全にイニシアチブを相手に握られているのだ。ジジイが少し力を加えるだけで、僕の青春は終わる。情けないことに、その状態で怒りをあらわに出来るほどの反骨心は、僕には無かった。

 

触診が終わり、ジジイは「ネットとか見た?」と僕に聞いた。この質問をされた時、僕は「きたっ…!」と思った。僕のターンの始まりだ。『俺を誰だと思ってやがる』結城秀康のそんな決め台詞が飛び出しそうになるのを堪え、僕は冷静に、「尖圭コンジローマだと思います(キリッ)」と言った。

 

尖圭コンジローマ。有名な性病なので、耳にしたことがある方も多いと思う。ちんこにイボができる病気だ。「ちんこ いぼ」でググると真っ先に検索結果に表示される。その症状は、ちんこにイボができる。それだけ。ていうかなあ、ネット最盛のこの時代、ググれば大体のことは分かるのだ。てめえは黙って薬を出しときゃいいんだよ。もう二度の俺のちんこに触るんじゃねえ。ジジイ、お前は二秒後に『そうです。尖圭コンジローマです』と言う…!!

 

そう思いながら、したり顔をしていた僕に向かってジジイは言った。

 

「全然違います」

 


つづく

 

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